新NISA「コラム」

新NISAの成長投資枠において注目すべきポイント

article_main005.jpg

 前回は新NISAのつみたて投資枠について解説したため、今回は成長投資枠を詳しくみていきたい。成長投資枠では、つみたて投資枠と異なり、上場株式や、アクティブファンドも対象となっている。そのため、つみたて投資枠でインデックスファンドを毎月定額積み立てておき、成長投資枠でリスク許容度に応じた値上がりが期待できるアクティブファンドに投資を行うというのも選択肢の一つとなる。前回はつみたてNISAで対象となるインデックスファンドについてランキング等を踏まえて紹介したため(「トレンドから見る、新NISAのつみたて投資枠活用術」を参照)、今回は、アクティブファンドに焦点を置き、解説していく。

成長投資枠では、年間投資枠、保有可能期間が拡大

 新NISAの成長投資枠では旧制度の一般NISAから年間投資枠、保有期間、投資対象で変更が行われている。年間投資枠は、旧制度の一般NISAでは120万円であったが、新制度では240万円へと拡充された。また、保有期間は、旧制度では5年間とされていたが、新制度では無期限化されており、ロールオーバー等の手続きを必要とせず、長期投資に適した期間設定となっている。投資対象商品は上場株式、投資信託となっており、投資信託では(1)信託期間20年未満を除く、(2)高レバレッジ型(ブル・ベア型など)を除く、(3)毎月分配型を除く投資信託を対象としている。また、外国債券を主要投資対象とするアクティブファンドは対象から除外するとの方針も出ているため、対象となる投資信託の条件については情報媒体や、金融庁のHP( 新しいNISA )等で新しい情報を確認したい。

投資対象資産、投資対象地域別のリスク、リターンをみると傾向が明らかに

 投資対象となるファンドを選ぶ際、どのような資産を投資対象としているのか、どのような国や地域を投資対象としているのかについて確認することも重要となる。例えば、投資対象資産であれば、株式、債券、REITなどのほか、それぞれを組み入れたバランス型などが一例として挙げられる。投資対象地域では、国内に限定されているファンドや、グローバルに投資を行うファンド、特定の国や地域に限定されているファンドなどがある。ウエルスアドバイザーが独自に投資対象資産、投資対象地域で分けた大分類毎のリスク、リターンの分布図は以下の通りである。(図表1参照)

図表1:過去5年間のリスク、リターンの分布図

005-01.gif
  • 2023年3月末時点
  • 各大分類のリスク・リターンは、ウエルスアドバイザーが独自に算出する指数に基づく
  • 国内債券型=「国内債券型(単純)」、バランス型=「バランス型(単純)」、国内株式型=「国内株式型(単純)」、国際株式型=「国際株式型(単純)」、国際債券型=「国際債券型(単純)」、国内REIT型=「国内REIT型(単純)」、国際REIT型=「国際REIT型(単純)」
  • (単純)は指数を構成するファンドの単純平均の意味
  • 出所:ウエルスアドバイザー作成

 縦軸は上に行くほど高いリターンを獲得したことを表しており、横軸は右に行くほどリスクが高いことを表している。つまり、左下に行くほど低リスク低リターンとなり、右上に行くほど高リスク高リターンとなる。例えば、リスク許容度が低い投資家は左下に位置する国内債券型を選択し、リスク許容度が高い投資家は右上に位置する国際株式型や国際REIT型、リスク許容度が中程度の投資家は中央付近に位置するバランス型、といったような選択をするのも一つの手である。自身のリスク許容度を把握することは重要なポイントであるため、しっかり確認したい。ただし、上記のリスク・リターン図はあくまで2023年3月末時点における過去5年間の数値を基に作成しているため、今後同様の分布傾向となるかは分からない。

過去1年間に資金が流入したファンドでは、株式を対象としたファンドが上位に

 成長投資枠の条件を当てはめた場合に対象となるアクティブファンドについて、2023年3月末時点までの過去1年間の純資金流入額ランキングを調べたところ、下記のようになった。(図表2参照)

図表2:2023年3月末時点における過去1年間の純資金流入額

順位 ファンド名 運用会社 カテゴリー 流入額
(1年間、億円)
1 フィデリティ・世界割安成長株投信 Bコース(為替ヘッジなし) フィデリティ 国際株式・グローバル・含む日本(F) 1,273
2 アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Bコース(為替ヘッジなし) アライアンス 国際株式・北米(F) 1,171
3 キャピタル 世界株式ファンド キャピタル 国際株式・グローバル・含む日本(F) 861
4 のむラップ・ファンド(普通型) 野村 バランス 746
5 ティー・ロウ・プライス 米国オールキャップ株式ファンド ティーロウ 国際株式・北米(F) 673
6 キャピタル・インベストメント・カンパニー・オブ・アメリカ ICA キャピタル 国際株式・北米(F) 618
7 ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(1年決算型) ピクテ 国際株式・グローバル・含む日本(F) 539
8 モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式オープン (為替ヘッジなし) 三菱UFJ国際 国際株式・グローバル・除く日本(F) 489
9 のむラップ・ファンド(積極型) 野村 成長 420
10 世界経済インデックスファンド 三井住友TAM バランス 399
  • 期間:2022年4月~2023年3月(月次)
  • 国内公募投資信託(確定拠出年金及びファンドラップ専用、ETF等除く)を対象に集計
  • 運用期間20年未満、高レバレッジ型、毎月分配型を除く
  • アクティブファンドは投資信託協会の分類に基づく
  • (F)=為替ヘッジなし
  • 3月の流入額はウエルスアドバイザーの推計値に基づく
  • 出所:ウエルスアドバイザー作成

 上位10ファンドでは国際株式型やバランス型がランクインしており、米国株式を対象としたファンドや、全世界株式を対象としたファンドに対する投資家からの人気が伺える結果となった。前回の記事で紹介したSBI証券における積立NISAの買付金額上位ファンドランキングでは、上位3本のうち2本が米国株式を対象としたファンドであったが、ポートフォリオのうち、米国のみに資産が集中すると、米国株式市場の相場環境が悪化した際、大きな損失を被る可能性がある。そのため、今回のランキングのようにグローバルに投資するファンドや、ランキングには入っていないが、国内の資産を投資対象とするファンドなどでも運用し、リスクを分散することも重要なポイントとなる。

成長投資枠についてのまとめ

 成長投資枠では、つみたて投資枠と異なり、株式を買い付けることも可能であり、選択の幅は非常に広くなっている。投資信託であっても株式であっても、自身のリスク許容度などに合った投資商品を選択し、長期投資を行いたい。また、今回は純資金流入額を取り上げたものの、運用成績、信託報酬等、様々な観点から投資信託の特徴を把握することも重要なポイントである。投資信託の詳細については、ウエルスアドバイザーのHPにおいて、運用成績、信託報酬等のコストなど、様々な項目が確認できるため、活用したい。運用成績では、ウエルスアドバイザーが投資対象資産や地域から独自に分類しているカテゴリー毎に、確認したいファンドが何本中何位の運用成績であるのかの相対比較ができる。(図表3参照)

図表3:ファンドの運用パフォーマンス

005-03.gif
  • ウエルスアドバイザーのHPより

 コストについては、信託報酬等など、カテゴリー全体の平均に対して上回っているのか、下回っているのかなどを確認することができるため、ファンドの相対的な比較に活用してほしい。(図表4参照)

図表4:ファンドのコスト

005-04.gif

 今回の記事ではアクティブファンドについて触れたが、投資目的を明確にし、リスク許容度や投資対象資産、地域などを考え、自身の考えに沿って成長投資枠を用いることが重要となる。

最新記事

NISA応援宣言トップページへ>>

ページトップに戻る