NISA「ニュース」
新NISAスタート後に始めた「オルカン」つみたて投資が初めての評価損、今つみたて投資者がなすべきことは?
米トランプ大統領が打ち出す関税政策の影響で米国をはじめとして世界の株式市場が混乱し、株価が大きく下落したため、新NISAを機に投資を始めた人たちが肝を冷やしている。特に、4月2日にトランプ大統領が発表した大規模な「相互関税」によって株価が急落し、4月8日には米「S&P500」は5000ポイントの大台割れ、「NASDAQ総合」は2024年12月高値から約24%安の水準まで下落した時のショックは大きかっただろう。新NISAがスタートした2024年1月からコツコツとつみたて投資をしてきた人たちも含み損を抱えることになった。新NISA開始で強烈な資金流入があった「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称:オルカン)のつみたて投資を振り返って今後を展望したい。
「オルカン」でのつみたて投資は2024年12月末までは極めて順調に推移した。たとえば、新NISAがはじまった2024年1月から毎月末に2万円をつみたて投資するというプランだった場合、2024年12月末時点のつみたて投資の評価額は約26.6万円で元本の24万円を2万円以上上回っていた。つみたて投資開始以来、おおむね投資元本を上回る投資成績が継続し、2024年8月5日の急落時に当時の投資元本14万円を1万円ほど下回る評価損の時期があったが、それも8営業日でプラスに転換して事なきを得ている。翌9月にも一時的に評価損の時期があったが短期に回復し、結果的に月末時点での評価額はつみたて元本に対してプラスの評価を2025年3月末まで継続している。
ところが、4月4日に投資元本30万円に対して評価額が28.8万円とマイナス評価に落ち込んでからは、4月28日まで17営業日連続でマイナスの状態が続いている。ファンドの基準価額は月末に向けて上昇を続けているものの、月末時点で初めて投資評価がマイナスになることも想定される事態になっている。つみたて投資している人は、現在までの株価の動きに落ち着かない心持ちになっていることだろう。
米国の関税政策に関する株価の反応は、トランプ大統領や政権の主要メンバーの発言ひとつで将来の見通しが大きく変わってしまう可能性があることが一番悩ましい。それこそ、ニュースの見出し一つで株価が右往左往するような状態になってしまう。4月後半になって株価が持ち直している背景には、4月2日に発表した大規模な関税策を4月9日に「90日間凍結する」と発表し、その後は関税に対する強硬姿勢が徐々に緩和しているような発言が続いているということがある。これが、ある日突然、どこかの国との交渉が険悪な結果になるというようなニュースが出て、米政権が態度を硬化させたなどいう事態になれば、せっかくの安心ムードが一気に悪化する可能性もある。このため、株価が不安定な状態がしばらく続く可能性が高い。
新NISAのスタートを機に投資信託への投資を始めた人たちにとっては、初めてといってよい本格的な下落局面ということになる。株式に投資する場合は、価格変動があるということは事前にわかっていたとしても、実際に自分自身の資産が目減りしている現実に直面すると気持ちが動揺することにもなるだろう。そのような場合は、足元の状況だけに思考をしばられてしまうのではなく、落ち着いて広い視野で考えるようにしたい。
たとえば、より長い期間の実績を振り返ってみる。「オルカン」が設定された2018年10月31日を起点として約6年半のつみたて投資の結果をみると毎月2万円の積み立て投資で2025年3月末まで78カ月のつみたて投資元本は156万円。つみたて投資の評価額は約269万円になっている。4月に株価が下落しても余裕で投資元本を上回る成果が残っていることになる。
そもそも「つみたて投資」は、投資するタイミングをずらして分散化することによって価格変動リスクを抑える投資手法として知られている。価格変動リスクを抑えるということは、価格の下落時には市場の下落率に対して資産の目減りを小さく抑えるという効果にもなるが、同時に価格の上昇時にも大きな収益が得にくい投資手法だ。文字通り「コツコツと収益を重ねる」ことを目標としている。したがって、つみたて投資の期間が短いと積み上がった収益が少ないため株価の下落時に積み上げた収益以上のマイナスになることがある。つみたて期間が長くなるほどに積み上げた収益が大きくなるため、株価下落時にもマイナスに落ち込むことが少なくなっていくことになる。
もちろん、つみたて投資は長期につみたてを行えば必ずプラスの収益が得られるというものではない。つみたて投資期間に、投資対象にした資産が最終的にはプラスの成績になっていることが条件だ。中には、バブル崩壊後の日本株式市場のように10年以上にわたって下落し続けるようなこともある。そのように下落が継続しているような投資対象でつみたて投資をしていてもプラスの成績にはならない。つみたて投資の投資対象として「全世界株式(オール・カントリー)」や「米国株式(S&P500)」、あるいは、「国内株式(日経平均株価)」など株式が選ばれるのは、中長期的にみると株式は値上がりすると信じられているからだ。
株式市場には200年以上の歴史(NY証券取引所は1817年の開設、日本の取引所の開設は1878年)がある。長い歴史の中では、「バブル崩壊」や「リーマン・ショック(世界金融危機)」などの歴史的といわれるさまざまな下落局面があったにもかかわらず、株価は史上最高値を更新し続けてきた。つみたて投資家が今なすべきことは、株式市場の復元力を信じてつみたて投資を継続することではないだろうか。評価額がマイナスになったから投資をやめたり、止めたりしていては資産形成にはつながらないということを確認しておきたい。
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