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根強い「オルカン」人気、ランクダウンの「FANG+」はパフォーマンスで見直しも =ネット証券の投信積立契約件数ランキング25年4月
大手ネット証券3社の投信積立契約件数ランキング(月次)2025年4月のトップは前月と同じ「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称:オルカン)だった。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は前月の同ポイントのトップから第2位に後退。第3位は前月第4位だった「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」が浮上し、前月第3位だった「iFreeNEXT FANG+インデックス」は第4位に後退した。また、トップ10圏外から「三菱UFJ純金ファンド」がジャンプアップして第8位にランクインした。このことで、ゴールド(金)を主要投資対象とするファンドがトップ10に2本入った。一方、前月は第9位だった「ひふみプラス」はトップ10から落ちた。
ランキングは、定期的に月次の投信積立契約件数トップ10を公表しているSBI証券、楽天証券、マネックス証券の公開情報を使用。各社ランキング1位に10点、以下、順位が落ちるたびに1点を減点し、第10位を1点として、3社のランキング10位までのファンドの点数を集計した。
◆根強い「オルカン」人気の背景は?
4月は米国株が乱高下した。「S&P500」は前月のマイナス5.75%から、一時は前月末比マイナス11.21%まで大きく続落したものの、その後、急速に株価を戻して月末比較ではマイナス0.76%になった。「NASDAQ総合」は3月末比プラス0.85%とプラス圏にまで戻った。同じように月次の騰落率では、香港「ハンセン指数」はマイナス4.33%、英国「FTSE100」もマイナス1.02%と下落したものの、国内「日経平均株価」はプラス1.20%、ドイツ「DAX」もプラス1.50%だった。米政権が4月2日に「相互関税」を発表したことで4月8日まで株価が急落したものの、その後、「各国別の関税を90日間一時停止する」という発表があったことで下落した株価が急速に戻った。
このような右往左往する材料には、つみたて投資を継続している投資家は反応することができない。今回のように急落して急に戻り、結果として月末比較でほとんど動かなかったということを経験すると、日々の値動きに一喜一憂することの無意味さを感じさせる。米国の関税策が、4月2日の発表のままに実施されることになると、世界中に張り巡らされた企業のサプライチェーンは大幅な見直しを迫られることになり、世界の株式市場の混乱は4月上旬の株価急落程度では収まるものではないだろう。それが、発表後1週間と経たずに「執行の90日間一時停止」が宣言されるドタバタぶりに多くの投資家があきれ返っていることだろう。この一事によって、世界の投資家はトランプ大統領の言動に対して強い疑いを持つようになってしまったといえる。世界経済の心臓ともいえる巨大な米国経済の先行きが確信をもって見通せないというやっかいな事態に陥ってしまった。
その結果、米国の代表的なインデックスである「S&P500」や「FANG+」に連動するインデックスファンドの人気が衰え、全世界の株式を組み入れた「全世界株式(オール・カントリー)」の人気が盛り返してきている。また、米国経済や米国株式とは異なる値動きをする「ゴールド(金)」に投資するファンドの人気も高まっている。これらは、「米国外し」を印象付ける動きだ。
ただ、4月上旬に急落した株式市場は、米国が「国別関税を90日間停止する」と発表してから急速に株価が戻った。「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は4月末には3月末比マイナス5%程度にまで基準価額が戻り、「iFreeNEXT FANG+インデックス」は4月末には3月末水準を超えて上昇している。このような動きを見せられると、米国株式市場の強さが改めて注目される。今後、分散投資の視点から「米国株式(S&P500)」への人気離散が継続するか、あるいは、人気が盛り返すことになるのか、その行方が注目される。
◆「ゴールド」ファンドの人気はどこまで?
株式市場が米国の関税政策の影響で右往左往している間、ゴールド(金)価格は堅調に推移している。NY金先物価格は、3月末に3150ドルの史上最高値(当時)から、4月に入っても連続して最高値を更新し、4月21日には3425ドルにまで上昇した。4月末は3319ドルへと高値から一服したものの、5月になると再び最高値更新をうかがう動きだ。株式市場が不安定な動きになっていることによって、改めて株式市場とは異なる要因で動く金価格の存在価値が増している。
リスク分散という立場では、米国「S&P500」に対して「全世界株式(オール・カントリー)」は投資地域を分散していることは事実だが、「株式」という資産クラスに投資していることでは同じことだ。地域を代表するような大企業になると世界市場を相手に商売するようになり、もはや本社がどこにあるのかという地域は企業規模が大きくなるほど希薄になる。時価総額が大きな銘柄で構成される「S&P500」や「全世界株式(オール・カントリー)」の値動きが似たものになるのは当然のことといえるだろう。
その点、ゴールドは経済活動をしているわけではなく、どの地域の景気が良いとか悪いとか、あるいは、どの産業が好業績なのかなどという状況とは関係が切り離された存在だ。米国の関税政策がゴールドそのものの価値を左右するようなことにはつながらない。ゴールドの価格上昇のスピードは速いため、一本調子に上がり続けると考えてしまうと失望する可能性もあるが、資産の一部をゴールドで保有してリスクを分散させるという投資姿勢は一段と一般化する方向にあり、それがゴールド価格を下支えし続けることになるだろう。世界の株式市場の不安定な状態が続きそうな今、ゴールド人気も簡単には衰えそうにない。
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