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「eMAXIS Slim」の「オルカン」と「S&P500」が利用者500万人突破も目立ち始めた格差

 2024年1月にスタートした新NISAで爆発的ともいえる資金流入を記録した「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の利用者がそれぞれ500万人を突破した。「オルカン」は2023年12月末時点の利用者が約255万人だったが、新NISAスタートから半年で約424万人に急増し、2025年6月末時点では約516万人に達した。同じく「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、2023年12月末時点で約308万人だった利用者が半年で約420万人に拡大し、2025年6月末時点で約511万人になった。ただ、ともに利用者500万人を突破したとはいえ、直近の資金流入額の勢いには格差が目立ってきている。

 ファンドの利用者数については、同ファンドを設定・運用する三菱UFJアセットマネジメントが主要ネット証券5社にヒアリングした保有者の延べ人数をまとめたもの。複数の証券会社でファンドを購入している場合は複数カウントされている。また、同ファンドの取り扱い販売会社はネット証券以外にも全国の銀行、証券へと広がっているため、ここで取り上げている数字がすべてではない。2025年3月末時点でNISA口座数が全国で2647万口座(日本証券業協会の発表)であることから、NISAを使っている人の5人に1人が「オルカン」か「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を使っていることになる。この2ファンドは投資家の間で相当に浸透し、「国民的ファンド」といえる存在になってきた。

 ただ、「オルカン」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、ともに外国株式インデックスファンドであるが、その運用の中身は異なる。このため、両ファンドは似たような成長を続けながら、その時々の市場の環境によって資金流入額の強さが異なる場面があった。「オルカン」は、「全世界株式(オール・カントリー)」という名前のごとく、世界各国の株式市場に上場している株式で構成された株価指数「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動することをめざしている。その投資対象国は米国(2025年6月末時点の組み入れ比率:64.37%)、日本(4.87%)、英国(3.27%)、中国(2.96%)、カナダ(2.87%)などとなっている。米国や日本をはじめとした先進国に加えて中国など新興国も含む株式が組み入れ対象になっている。これに比べると、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は米国が100%投資先になっている。米国だけに投資するため、米国に関する材料で株価が大きく動くことがある。

 2ファンドの基準価額の推移を2024年1月からみていくと、基本的に「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が「オルカン」を上回る成績を続けてきた。2023年12月末を基準にすると、2024年12月末時点で「オルカン」がプラス32.48%に対し「S&P500」はプラス40.78%だった。ただ、2025年4月の株価急落時には「S&P500」の下落率は大きくなり、2025年6月末時点では「S&P500」のプラス33.96%に対して「オルカン」はプラス31.59%とほぼ変わらないくらいの水準になっている。また、パフォーマンスの面で大きな違いになっているのが、両ファンドともに2025年1月に付けた最高値を「オルカン」は7月11日時点で抜いて最高値を更新しているにもかかわらず、「S&P500」は7月18日時点でも抜くことはできないでいる点だ。

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 「オルカン」のパフォーマンスについては、組み入れ比率が6割を超える米国株の影響は大きいが、2025年になって英国やドイツなど欧州株が史上最高値を更新したこと、中国の株価が3年ぶりの高値に盛り返してきたことなど、米国以外の国々の株価も好調になってきていることの影響が加味されている。米国株価も史上最高値に進む好調を持続しているものの、やはり4月にあった急落において大きく下落してしまった不安定さが懸念される材料になっている。このため、個別ファンドの資金流入額の水準が「オルカン」と「S&P500」の間で差が出るようになっている。2024年3月頃までは、両ファンドが資金流入額の1位、2位を続けることが当たり前だったが、2025年6月最終週(6月23日~27日)の資金流入額ランキングでは「オルカン」は流入額ランキングの第2位にとどまっていたものの「S&P500」はトップ10から落ちることになった。直近の7月第3週(7月14日~18日)の資金流入額も「オルカン」の約218億円に対して「S&P500」は約140億円と「オルカン」の64%の水準でしかない。

 「オルカン」と「S&P500」の人気の差が目立ってきたのは4月の急落後のことなので、このまま「オルカン」優位が定着するかどうかを判断するには早計だ。実際に、2024年1月以降の人気(資金流入額)は「オルカン」優位が続いていたものの、2024年11月から2025年2月までは「S&P500」が資金流入額で「オルカン」を上回るということがあった。ただ、2025年5月以降の「S&P500」への資金流入額の減退は大きい。4月の急落以降はアクティブファンドの「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」が人気を高めている。「世界のベスト」と世界中の株式市場から優れた企業を厳選するファンドで、米国株に特化した「S&P500」とは投資対象の広がりが違う。市場は「米国」一国集中から「世界への分散」にかじを切ったようにみえるが、これが定着するかどうかを注目したい。

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