新NISA「コラム」

資産形成のヒント(3)、資産形成とは「あきらめを知らず長期に投資を続けること」

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 2024年1月にスタートする新NISA(少額投資非課税制度)を前に、資産形成プランを考え始めた人は少なくないだろう。既に投資を始めている方も含めて、この機会に「投資の基本」に立ち返って、失敗しないためのポイントを押さえておきたい。第3回目は、資産形成を成功させる大きなポイントになる「長期投資」について解説したい。特に、ゼロから数千万の資産を作ろうとする場合、あるいは、定年を待たずに「FIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立の獲得による早期退職)」をめざす若者も、少なくとも20年、できるなら30年という期間を視野に入れた長期投資をめざしたい。

 「長期投資」を考える際に、併せて実践したいのが「つみたて投資」だ。「つみたて投資」とは、毎月、同じ日にちに同じ金額を継続的に投資することをいう。ひらがなで「つみたて」とするのは、「つみたてNISA」にあやかっている。「つみたてNISA」では、ノーロード(購入時手数料無料)、かつ、低い信託報酬のファンドを投資対象に選んでいるため、「つみたて投資」をする際の投資コストを低く抑えて投資利益を最大限に追求する投資が実践できる。信託報酬率が低いことに加え、ノーロードは「つみたて投資」をする際に、非常に大きな効果がある。

 実際に、1万円を毎月積み立てて、2%の購入時手数料を取られた場合、毎月の積立額は9,800円になってしまう。単純に10年間の「つみたて投資」による投資元本は、ノーロードであれば120万円だが、2%の手数料を取られたら117万6,000円と、元本部分だけで2万4,000円の差ができてしまう。多くの金融機関で投信のつみたて投資コースでは、購入時手数料を無料にしているが、念のために、ご自身が使っている金融機関のつみたて投資の仕組みを調べたい。

図表1:「日経平均株価」を使った長期つみたて投資の経緯(1989年1月~2023年6月)

図表1:「日経平均株価」を使った長期つみたて投資の経緯(1989年1月~2023年6月)
  • 出所:ウエルスアドバイザー作成

 「長期投資」に「つみたて投資」を重ねて実行する効用について、代表的な国内株式の株価指数である「日経平均株価」を使って説明する。「日経平均株価」は、国内の代表的な企業225社の株価の平均を示す指数という意味だが、単純平均ではなく各社の採用株価の水準を調整する株価換算係数などを使って日本経済新聞社が算出している指数になる。日本経済のバブル期に付けた高値が1989年12月末の3万8,915円を約35年間にわたって一度も更新することなく、現在は3万3,000円台になっている。長期投資で1989年に投資を開始して「日経平均株価」の最高値で購入してしまった場合、30年以上を経過しても収益がプラスになっていないことになる。実際には、日経平均株価に採用されている株式は、多くの銘柄が配当を出しているため、それら配当金を含めた株価指数(日経平均トータルリターン・インデックス)では、2020年11月25日に最高値を更新している。それでも最高値更新まで約31年間を要したことになる。

 投資して30年以上にわたって投資収益が出ないとなると、その投資は「失敗した」と言わざるを得ない。実際に「日経平均株価」は、1989年12月の最高値から、2009年2月のリーマンショック時の安値は7,568円へと80%以上下落している。100万円投資して20年後に20万円を割り込んでしまった計算だ。実際に、そのような経験をしたら、投資したことを悔やんでも悔やみきれないだろう。

 しかし、このように大きな株価下落を経験した「日経平均株価」への投資でも、「つみたて投資」をしていたら、その様子は大きく異なる。「日経平均株価」が最高値を付けた1989年の1月から、毎月末に1万円ずつの「つみたて投資」を実行したとすると、1989年12月に株価がピークを打って、下落する過程では、投資評価損を抱えてしまう。投資開始から5年後の1993年12月末には、投資元本60万円に対し、つみたて投資の評価額は45万円(元本に対しマイナス25%)だ。10年たった1998年12月末でも投資元本120万円に対し「つみたて投資」評価額は82万円(マイナス32%)だ。15年後の2003年12月末には投資元本180万円に対し「つみたて投資」評価額は116万円(マイナス36%)。20年後の2008年12月末には投資元本240万円に対し「つみたて投資」評価額は136万円(マイナス43%)だったものの、24年と9カ月後の2013年9月に投資元本297万円を「つみたて投資」評価額が306万円と上回ることになった。

 この株価評価は、配当を除く指数であるため、株価の水準では依然として過去最高値を更新してはいない。にもかかわらず、「つみたて投資」では25年足らずで投資元本を上回った。その後は含み益をどんどん積み増して、2023年6月末時点では投資元本が414万円に対し「つみたて投資」評価額は888万円になっている。投資元本の2倍以上の評価額になっている。

 「つみたて投資」の優れたところは、投資元本に対するマイナス評価額が、実際の株価の下落率よりも抑えられるところだ。「日経平均株価」が80%以上のマイナスとなった2009年2月時点においても、「つみたて投資」の場合、投資元本242万円に対し評価額が118万円とマイナス51%にとどまっている。評価額が半分を割り込むというのは、相当大きな落ち込みといえるが、実際の株価指数の80%以上の下落と比較すると、傷はかなり浅くなっている。

 長期にわたって投資を継続できるかどうかは、投資後の評価額の推移に大きな影響を受ける。可能であれば、2ケタ台のマイナス評価は避けたいところだ。ただ、株式市場は、時折年間で20%~30%という大幅な下落を経験することがある。また、バブル崩壊後の「日経平均株価」のように、バブル高値から世界金融恐慌による大暴落という極端な株価変動では高値から80%を超えるようなマイナスに落ち込むこともある。成長資産への株式への投資では、この大きな価格変動、特に、下落時に耐えられるかどうかが大きなポイントになる。株式に単独で投資しようと考える場合は、予め、2ケタマイナスの下落も覚悟する必要がある。その下落のショックを小さくするためには、株価とは逆の方向に動きやすい債券を組み入れる、または、「つみたて投資」を実行するようにすればよい。かつて経験したことのないほどの株価下落を経験した「日経平均株価」に投資したとしても、約35年間の「つみたて投資」の結果、投資元本に2倍以上の運用成果を得ることができた。長期にわたって「つみたて投資」を実行することで、大きな資産を作ることを考えたい。(グラフは、日経平均株価とつみたて投資の推移)

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