新NISA「コラム」

2024年1月から「新しいNISA」スタート、無期限の非課税枠1,800万円で本格的な「投資の時代」に移行

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 2024年1月から、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的な拡充・恒久化が実現し、「新しいNISA」が始まる。投資収益が非課税となる年間投資枠は、従来の「一般NISA」の120万円、「つみたてNISA」の40万円から大幅に拡大する。「新しいNISA」の「成長投資枠」が240万円、「つみたて投資枠」が120万円で、両枠を併用することができるため、最大で年間360万円まで投資が可能になる。しかも、非課税保有期間が無期限になり、非課税保有限度額(総枠)は1人当たり1,800万円と、従来の限度額(一般NISAが600万円、つみたてNISAが800万円)を大幅に拡大する。日本の個人金融資産が預貯金に偏重し、「貯蓄から投資へ」ということが長年の課題とされてきたが、「新しいNISA」は、制度面で「貯蓄から投資へ」を大きく後押しすることになる。新制度の内容を良く理解して、将来のまとまった資産づくりに活用していきたい。

新しいNISA制度のポイント

 「新しいNISA」のポイントは、(1)非課税保有期間の無期限化、(2)口座開設期間の恒久化、(3)「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が設けられ、この併用が可能、(4)年間投資枠は、「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」が240万円で合計最大年間360万円、(5)非課税保有限度額は1,800万円(うち、成長投資枠は1,200万円)で枠の再利用が可能。

 「新しいNISA」の口座開設の申し込み受付は、2023年10月頃から始まる予定だが、現在のNISA(一般NISA、または、つみたてNISA)を利用している人は、何も手続きをしなくても自動的に現在のNISAを開設している金融機関に「新しいNISA」の口座が開設されることになる。この機会に「新しいNISA」を別の金融機関に開設したいと考える場合は、「新しいNISA」の口座開設の申し込みとともに、既存のNISA口座を廃止(解約)する手続きを行う必要がある。

 「新しいNISA」は、無期限の口座であり、かつ、最大1,800万円の資産をつくっていく口座になる。しかも、枠の再利用が可能であるということを考えれば、「住宅の頭金用」というような期間の短い投資目的から、「老後の生活のための資金」という長期の投資目的まで、様々なニーズに対応した商品が求められる。従来の期間限定の口座で限度額も数百万円だった「一般NISA」や「つみたてNISA」とは異なる価値があるといえる。20代から60代を越えた世代にまで、様々な資産形成・運用のニーズに対応できるだけの投資商品の品ぞろえが必要になる。

 たとえば、現在の「つみたてNISA」の対象商品は金融機関によっては、投資初心者が銘柄選択で迷うことがないようにということを重視して3本~5本程度の品揃えにしている金融機関が少なくない。これが、「新しいNISA」の「つみたて投資枠」でも同じような品揃えだったら、果たして、長い生涯の投資ニーズに応えられるのだろうか? 5年~10年程度の運用期間で資産形成をするのであれば、投資リスクが大きい「株式インデックスファンド」の品揃えだけでは不十分といえ、もっとリスクを抑えたバランス型のファンドも選択肢として必要になるだろう。

 金融庁が「新しいNISA」の制度概要を説明するために作った資料では、制度について以下のように紹介している。

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一方、同じく金融庁が既存のNISA制度の特徴をまとめた資料は以下の通りだ。

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既存のNISAと「新しいNISA」の違い

 既存のNISAと「新しいNISA」の制度としての大きな違いは、既存のNISAでは「一般NISA」と「つみたてNISA」は併用することができなかったが、「新しいNISA」では、「一般NISA」に相当する「成長投資枠」と「つみたてNISA」に相当する「つみたて投資枠」の併用が可能になることだ。このことによって、非課税保有限度額が最大で1,800万円に拡大した。

 また、「新しいNISA」の非課税保有限度額は1,800万円だが、これは個人の限度額になる。夫婦2人で世帯の限度額になると3,600万円の枠が使える。結婚していて、夫婦としての老後生活を考えた場合、かつて話題になった「老後2,000万円不足問題」などを十分に賄えるだけの資金を用意できる制度だ。たとえば、年3.2%で運用できる商品があれば、毎月3万円を30年間積立投資して1,800万円をつくることができる。これでも「新しいNISA」で使用した非課税投資枠は1,080万円だけなので、まだ720万円の枠を残している計算だ。非課税投資枠は、様々な目的で併用ができる。

 一方、投資対象商品については、「つみたて投資枠」は「つみたてNISA」の対象商品がそのまま投資対象になるものの、「成長投資枠」については、「一般NISA」で投資可能だった商品から一部の商品が除外される。「一般NISA」では、投資対象は「上場株式と投資信託等」とされているが、「成長投資枠」の投資対象は、上場株式については「整理・管理銘柄を除外する」という制限がついた。また、投資信託についても「信託期間20年未満、高レバレッジ型及び毎月分配型を除外する」という制限がある。このため、「新しいNISA」に備えて、運用会社では「新しいNISA」の条件に適合するように、信託期間の延長や毎月分配型のファンドについては隔月分配コースを追加するなど、商品性の変更を検討している。「成長投資枠」で投資可能な商品については、投資信託協会の公式ホームページで公表されることになっている。

Q&A

現行NISAからのロールオーバーは可能か?

A. 現在の「一般NISA」、「つみたてNISA」から、「新しいNISA」へのロールオーバーはできない。現在のNISAは、2024年以降は新しい口座を開設することはできなくなるが、運用については「一般NISA」は5年間、「つみたてNISA」は20年間という当初の期間で運用を継続できる。ただし、それぞれのNISAにおいて、運用期間終了後は、非課税メリットを失って特定口座等に払い出されることになる。このため、現在のNISAで運用している資産について、継続的に非課税で運用したい場合は、一旦現金化して、改めて「新しいNISA」の投資枠内で購入することなどが必要になる。

年齢層別の、「新しいNISA」の活用法は?

A. 年齢層という違いより、「投資目的」によって「新しいNISA」の活用方法を工夫したい。たとえば、20代で「FIRE(経済的自立と早期リタイヤ)」をめざすのであれば、毎月の投資可能額をできるだけ大きな金額にして「つみたて投資枠」で株式インデックスファンドを毎月積立投資するという使い方がある。株式インデックスファンドは、投資環境によって大きく下落するようなこともあるが、中長期的には経済成長率を上回る上昇をすると期待される投資信託だ。経済環境が厳しい時には、投資元本を下回っている状態に耐える必要もあるが、一方で、超金融緩和相場の再来などがあると、想像以上に株価が大きく上昇することもある。積立投資の結果、資産評価額が非常に大きな金額になって「FIRE」を実現することができるかもしれない。

 一方、30代で将来は結婚もしたいと考え、持ち家も持ちたいと考えている人であれば、5年先、10年先など比較的短い期間で投資の結果を得なければならない。その場合は、株式インデックスファンドよりも、リスク水準が低いバランス型のファンドがふさわしい。「つみたて投資枠」を使って毎月積立投資をしつつ、ボーナス時期などまとまった資金を運用に回せる場合は「成長投資枠」で追加投資を行うという使い方もできる。また、結婚や住宅取得という目標は、当初の目的とは変わることもある。たとえば、住宅の頭金の目的で「つみたて投資枠」でバランス型ファンドを使った積立投資をしていたものが、住宅を取得する計画がなくなった場合は、株式インデックスファンド等に切り替えて、より長期の資産形成に投資目的を改めて運用を継続するという方法もある。その際は、まとまった資金で一括投資も可能な「成長投資枠」を活用するなど、「新しいNISA」の投資枠を柔軟に使っていきたい。

 退職層など60代以降に、まとまった退職金の運用や、それまで貯蓄した資金をまとめて運用し、かつ、資産を取り崩しながら生活を豊かにしたいという考えの場合、「成長投資枠」に毎年240万円ずつ隔月分配型の投資信託に資金を移していくという使い方もできる。公的年金をもらう前の状態でも、偶数月の分配ファンドを選べば、疑似年金をもらいながら公的年金の取得開始を待つという使い方もできる。あるいは、公的年金をもらい始めている場合は、その年金に上乗せして投信の分配金を受け取るが、あるいは、奇数月の分配ファンドを選んで公的年金の支給がない月に投資信託の分配金をもらいながら生活資金を補充するという方法もある。「成長投資枠」は総枠で1,200万円の枠があるので、この枠を有効活用したい。

現行のNISA以外の金融機関でも開設可能か?

A. 現在のNISAを開設している金融機関以外に「新しいNISA」の口座を開設することは可能だ。その場合は、「新しいNISA」の口座開設が可能になったら(現在は未定、従来のNISA口座の開設申し込みで2024年1月スタートをめざすのであれば10月頃になるとみられている)、金融機関に「新しいNISA」の口座開設申し込みを行い、既存のNISAについては解約の手続きをすることが必要だ。既にNISA口座を持っている人が、何も手続きをしないと、そのまま今の金融機関に「新しいNISA」の口座ができることになる。

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