新NISA「コラム」
新NISAで買える投信(1)、「つみたて投資枠」の軸になる外国株式インデックスファンド
今年1月にスタートした新NISAは、1人当たりの投資収益非課税枠が1800万円、非課税対象期間も無期限ということもあり、これを機に投資をスタートする人も少なくないと考えられる。折しも、日経平均株価が1日で1000円以上上昇するという株高局面を迎えている。「新NISAを使って何に投資すれば、最も効果的に運用ができるだろうか」と考え中の方も少なくないと考える。そこで、新NISAで購入できる主な投資信託の種類やその特徴について概観してみたい。ここでは投資信託協会や金融庁が発表している商品リストに基づいて紹介する。実際には、個々の金融機関によって取り扱いの有無が生じることにご留意いただきたい。まずは、「つみたて投資枠」の対象商品から紹介したい。
「つみたて投資枠」は、昨年末までは「つみたてNISA」として年間投資枠40万円・非課税保有期間20年間で提供されていた投資収益非課税枠のことだ。新NISAになって、年間投資枠は120万円に3倍増。非課税保有期間は無期限になった。投資対象商品は、「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」とされ、かつて「つみたてNISA」の対象商品として選定されていた際の条件を踏襲している。つまり、ノーロード(販売時手数料が無料)、投資対象に必ず株式を含む、国内資産を対象としたインデックスファンドの場合は信託報酬率が年0.5%以下など手数料率に上限を設けるなどの条件がある。これら条件をクリアした商品を金融庁が取りまとめて「つみたて投資枠対象商品一覧」として公表している。
「つみたて投資枠対象商品」は、現在のところ「指定インデックス投資信託」が227本、「指定インデックス以外の投資信託(アクティブ運用投信等)」が46本、「上場株式投資信託(ETF)」が8本で、合計281本になっている。それなりに本数があるため、選ぶのに苦労するという印象を持つかもしれないが、この281本(ETFを除く273本)の中で、人気のある商品は一握りだ。対象商品の純資産総額で大きい順に列挙すると、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」が約3兆6400億円でトップ。次に、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」が約2兆4700億円、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド『愛称:SBI・V・S&P500』」が約1兆4000億円、「楽天・全米株式インデックス・ファンド『愛称:楽天・VTI』」が約1兆3500億円となり、1兆円を超える商品になる。これらは全て「指定インデックス投資信託」だ。
「つみたて投資枠」においては、「指定インデックス投資信託」が選好されている。中でも米国株式の代表的な株価指数である「S&P500」と新興国を含む全世界株式を対象とした株価指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」、そして、全米株式を対象とした「CRSP US Total Market Index」に連動するインデックス投資信託に人気が集中している。ここからみえることは、「米国株式」が人気の中心にあるということだ。全世界株式の「MSCI ACWI」についても、2024年1月末現在で約63%を米国株式が占めている。「S&P500」は今年になって史上最高値を更新するなど好調なパフォーマンスを続けていることが人気の背景だ。
株価指数に連動するインデックス投資信託は、連動をめざすインデックス(株価指数)の特徴が、すなわち商品特性であり、純資産残高が大きい人気のある商品は信託報酬率も比較的低位にある。たとえば、純資産残高トップの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の信託報酬率は年0.0935%、第3位の「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド『愛称:SBI・V・S&P500』」も0.0935%であり、「つみたて投資枠」の対象商品で「S&P500」に連動するインデックス投資信託としては最も低い水準になっている。そして、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」は0.0572%という低い水準にある。「全世界株式」のインデックス投資信託では「楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド『愛称:楽天・オールカントリー』」が0.0561%で最も低い水準にあるが、それに準じる低水準だ。「楽天・全米株式インデックス・ファンド『愛称:楽天・VTI』」は残高は大きいものの信託報酬率は0.1617%とやや水準が高い。同じ「CRSP US Total Market Index」に連動するインデックス投資信託では「PayPay投資信託インデックス アメリカ株式」が0.0803%、「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド『愛称:SBI・V・全米株式』」が0.0935%と、より低い信託報酬率になっている。
それぞれ株価指数の特徴は、「S&P500」は、米国を代表する500社で構成された株価指数で、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしている。組み入れ銘柄は時価総額加重平均で配分比率が決まるため、時価総額の大きな銘柄の配分比率が高くなる傾向がある。2023年12月末時点での組み入れ上位は、アップル、マイクロソフト、アマゾン、エヌビディア、アルファベット、メタ・プラットフォームズなど情報通信(IT)系の銘柄が上位を占める。業種別比率ではテクノロジーが28.9%、金融が13.0%、ヘルスケアが12.66%などとなっている。(「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の月報より)
「CRSP US Total Market Index」は米国市場で投資可能な銘柄の100%を投資対象とし、時価総額カバー率は100%だ。2023年12月末現在の投資銘柄数は3710銘柄で、組み入れ上位は、アップル、マイクロソフト、アマゾン、エヌビディア、アルファベットなどとなり上位銘柄の顔ぶれは「S&P500」と変わりがない。業種別ではテクノロジーが31.1%、一般消費財が14.5%、資本財が13.1%、ヘルスケアが12.1%などとなっている。(「楽天・全米株式インデックス・ファンド『愛称:楽天・VTI』」の月報より)
全世界株式「MSCI ACWI」は、新興国を含む全世界の株式を投資対象としているため、2023年12月末現在で組み入れ銘柄数は2839銘柄で、組み入れ上位国・地域は、米国59.4%、日本5.4%、英国3.3%など先進国に加え、インドが1.7%、台湾が1.5%など新興国が入ってくる。組み入れ銘柄の上位は、アップル、マイクロソフト、アマゾン、エヌビディアなど米国株式インデックスと似たような顔ぶれになる。業種別もテクノロジーが21.7%、金融が15.1%、ヘルスケアが10.6%などとなっている。(「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の月報より)
このように、各株価指数には組み入れ銘柄数や、カバーする範囲などが異なり、それによってパフォーマンスにも違いが出ている。個々の株価指数の特徴やパフォーマンスの推移などの違いをよく理解した上で、投資対象を選ぶようにしたい。(グラフは代表的なインデックス投信の過去3年間のパフォーマンス推移)
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