新NISA「コラム」

新NISAで買える投信(6)、同じ先進国株式インデックスでパフォーマンスが異なる要因とは?

 今年1月にスタートした新NISAは、1人当たりの投資収益非課税枠が1800万円、非課税対象期間も無期限ということもあり、これを機に投資をスタートする人も少なくないと考えられる。折しも、日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新し、株式投資についての関心が高まっている。「新NISAを使って何に投資すれば、最も効果的に運用ができるだろうか」と考え中の方も少なくないと考える。そこで、新NISAで購入できる主な投資信託の種類やその特徴について概観してみたい。ここでは投資信託協会や金融庁が発表している商品リストに基づいて紹介する。実際には、個々の金融機関によって取り扱いの有無が生じることにご留意いただきたい。「成長投資枠」で買える商品のパフォーマンス(運用成績)を調べると、2024年2月末時点では「S&P500」連動のインデックスファンドをはじめ、先進国株式に投資するファンドのパフォーマンスの好調さが目立つ。しかし、同じようなインデックスファンドでも、そのパフォーマンスには差がある。どんな違いがパフォーマンスに影響しているのだろうか?

 新NISA「成長投資枠」の対象ファンド(純資産残高10億円以上)の過去3年(年率)のパフォーマンスを調べると、2024年2月末時点で5ツ星ファンドのトップは「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」の38.52%、次に、「SMT MIRAIndex 宇宙」の27.58%、そして、「野村 インデックスファンド・先進国ESG株式」の26.48%が続く。その次が「S&P500」に連動したインデックスファンドで、「先進国好配当株式ファンド(年2回決算型)」が続く。米国株をはじめとした先進国株式ファンドの成績が良く、その中でも「半導体」「宇宙」「高配当」といった関連に着目したファンドの成績が良いことがわかる。

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 パフォーマンスで第3位に入った「野村 インデックスファンド・先進国ESG株式」に注目すると、現在のインデックスファンド市場の状況が浮かび上がってきて面白い。同ファンドは、「FTSE4Good Developed 100 Index」をベンチマークとして運用するインデックスファンドで、同指数は先進国株式の中から、独自のESG選定基準によって銘柄を選定し、時価総額上位の約100銘柄で構成する指数になっている。同ファンドのリターンは、一般的な先進国株式インデックスファンドである「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」の3年(年率)リターン22.25%を4.23%の差で大きく上回っている。「ESG」の要素が、現在の市場で、それほど高く評価されているのかといえば、そうでもない。この運用成績の差はベンチマークにするインデックスの対象範囲が異なっているためだ。

 「野村 インデックスファンド・先進国ESG株式」は、日本を含む先進国株式を投資対象としており、「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」は、日本を除く先進国株式(MSCIコクサイインデックス)を投資対象としている。この2つのファンドのパフォーマンスの違いは、「日本」を含むか含まないかという点がポイントになっている。「ESG要素」がパフォーマンスに与えた効果については、日本を除く先進国株式を投資対象とした「Smart-i 先進国株式ESGインデックス」が「MSCI-KOKUSAI ESG リーダーズ指数(配当込み、円換算ベース)」に連動するインデックスファンドであり、3年(年率)リターンが22.79%と「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」をわずかに上回る運用成績になっている。3年(年率)で0.54%の差だ。

 現在の世界の株式市場は、史上最高値を更新している米国株式と日本株式が市場のけん引役を担っている。インデックスファンドの良し悪しは、米国株式や日本株式をどの程度組み入れているかで変わる。「S&P500」に連動するインデックスファンドが上位に来るのは、米国株100%の組み入れ比率であるためだ。先進国株式インデックスも70%程度を米国株が占める。日本株式も今年になって、バブル期の高値を34年ぶりに更新するなど、好調ぶりが際立ってきた。ファンドのパフォーマンスの点でも、「日本を除く先進国」よりも、「日本を含む先進国」の方が、より高い運用成績になっている。

 このように、ファンドの運用成績は、個々のファンドの投資対象の範囲、また、銘柄選定の条件などによって運用成績が異なる。また、企業の持続成長性に係る要素として重要視されてきている「ESG」についての評価も「FTSE4Good Developed 100 Index」と「MSCI-KOKUSAI ESG リーダーズ指数」とでは、評価の基準が異なり、その違いが運用成績にも影響を及ぼすことになる。この評価基準の違いは、アクティブファンドになると、より明瞭な違いになってくる。

 「成長投資枠」の対象銘柄(ETFなど上場銘柄を除く)は、現在1880銘柄もある(2024年3月5日現在)。1本1本についてその投資戦略の内容を吟味していくことは現実的ではない。ウエルスアドバイザーのサイトでは、「カテゴリー」や「レーティング」などでスクリーニングして投資対象を絞り込んで比較検討することが容易だ。今回は、「レーティング」を使って、カテゴリー内で上位10%以内の成績を収めている「5ツ星(☆☆☆☆☆)」に絞ってファンドを検討した。「カテゴリー」で絞ると、「国内株」「国際株」「国際債券」などと気になる「カテゴリー」で対象商品を絞り込むこともできる。

 より良い成績をめざして、自身で納得のいく商品を選ぶためには、投資対象ファンドについて、その投資対象の範囲や銘柄選定のルールや考え方など、そのファンドの運用について調べて理解することが必要だ。このステップを抜きにしては、資産運用で成功すること、長期に資産運用を続けることも難しくなるだろう。一般に公開されている無料のツールを使っても、投資対象を絞り込むことは可能だ。ウエルスアドバイザーの「NISA対象商品一覧」なども活用して、納得のいく投資対象に巡り会っていただきたい。(グラフは、「成長投資枠」対象ファンドの代表的な先進国ESGインデックスファンドのパフォーマンス推移)

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