新NISA「コラム」

新NISAで買える投信(7)、希少な「隔月分配型」は多様な分配原資と分配実績に注目

 今年1月にスタートした新NISAは、1人当たりの投資収益非課税枠が1800万円、非課税対象期間も無期限ということもあり、これを機に投資をスタートする人も少なくないと考えられる。「新NISAを使って何に投資すれば、最も効果的に運用ができるだろうか」と考え中の方も少なくないと考える。そこで、新NISAで購入できる主な投資信託の種類やその特徴について概観してみたい。ここでは投資信託協会や金融庁が発表している商品リストに基づいて紹介する。実際には、個々の金融機関によって取り扱いの有無が生じることにご留意いただきたい。投資ニーズは人それぞれだ。「成長投資枠」で買える投資信託の中で「隔月分配」の商品について、分配実績や商品の内容について確認してみたい。

 新NISAの対象となる投資信託から「毎月分配型」を排除したのは、NISAの大きな目的として「資産形成」が置かれ、資産を増やしたいと考える場合、収益の一部を毎月、どんどん吐き出していくような商品はふさわしくないという考え方が基本にある。資産形成の大きな力になる「複利効果」を活かすには、債券の利子や株式の配当等のインカムゲインは再投資して将来のより大きな果実に繋げた方が良いということだ。資産形成を目的とした人にとっては、この考え方に違和感がないかもしれない。しかし、シニア世代で、資産を活用しながら日々の生活を豊かにしたいと考える人にとっては、「資産形成層だけを意図した商品選定」に、ある種の抵抗感を感じるのではないだろうか。

 新NISAの非課税投資枠は1人当たり1800万円だ。1年間で使える投資枠は最大で360万円であるため、総枠を使い切るのに5年間を要する。5年をかけて、1800万円の投資非課税枠に資金を移し、そこから年4%程度の分配金利回りが期待できる投資信託に投資したとすると、毎月の分配金の額は6万円になる。NISA以外の口座では、この6万円から約20%が税金で差し引かれるので、手取り金額は4.8万円程度になってしまうが、NISAでは手取りで6万円がまるまる手に入ることになる。老後の年金生活にとって、手取り6万円と4.8万円の差、毎月1.2万円の差は決して小さくはない。そのようにNISAを活用したいと考える高齢者は少なくないだろう。

 たとえば、公的年金は毎月偶数月の15日に2カ月分が支払われるため、奇数月に投資信託の分配金を受け取って年金の支払いがない月の収入を補うという考え方もできる。1800万円の資金に年4%の分配金利回りがあれば、隔月の分配金受取額は12万円になる。国民年金(老齢基礎年金)の満額は6万6050円(2023年度、68歳以上。67歳以下は6万6250円)なので、2カ月分は13.21万円(68歳以上)。仮に、1800万円の資金がNISA口座にあり、年4%の分配金利回りがあれば、隔月で奇数月に分配金を受け取ることで、老齢基礎年金の受給と合わせて毎月12万円程度の収入を得ることができる計算だ。ある程度の金融資産がある年金暮らしの人には、有効な資産活用法といえるのではないだろうか。

 1800万円の資金がなく、その金額が1000万円だとしても、年4%の分配金利回りがあれば、隔月で6.6万円の収入が得られる。この分配金利回りが投資信託の年間収益に対して無理のない水準の支払額であれば、保有している資産は、実質的にほとんど減らすことなく、年金生活の生活費を上乗せすることができる。NISAによって収益に対する20%分の課税が免除されることのメリットは、分配金の手取り額を確認した時に大きな恩恵を感じるだろう。

 資産活用層にニーズがあると考えられる「隔月分配型」の投資信託は、3月12日現在の「成長投資枠」の対象ファンド1883本のうち、わずか94本しかない。全体に対する比率は4.99%だ。圧倒的に年1回決算型(基本的に分配金を払い出さずに投資信託の中で配当等を再投資して資産価値を高めるタイプ)が多く、全体の約70%を占める1298本になっている。また、「隔月分配型」の中にも資産形成に力点があって分配金の払い出しを抑えるタイプのファンドもある。分配金の払い出しが手厚い投資信託を選びたい場合は、個々の投資信託の分配方針や実績などをよく確認して選ぶようにしたい。

 この「隔月分配型」の投資信託は、その投資信託の投資対象資産が様々で面白い。分配金の原資となるインカムゲインが手厚く得られる投資資産は、「金利が高い国の債券」、「REIT(不動産投信)」、あるいは、「高配当株式」などが考えられる。「隔月分配型」のファンドの運用の中身も、基本的に債券やREIT、株式等の高いインカム収益を狙うようなポートフォリオを作っている。投資信託によっては、インカム収益だけではなくキャピタルゲイン(値上がりによる収益)も併せて分配原資と考えるものもある。

 たとえば、「DIAM J-REITオープン(2カ月決算コース)」は、国内REITを投資対象として現在のREITの高い配当収益を原資に隔月の分配金を支払っている。2月末時点のポートフォリオの予想配当利回りは年4.59%であり、1万口当たり40円の分配金を安定的に支払っている。このところ基準価額が下落して2800円程度なので、3月12日現在の分配金利回りは年8.45%になっている。

 「NWQグローバル厳選証券(H無/隔月分配型)(愛称:選択の達人)」は、好利回りの投資適格社債やイールド債券、あるいは、転換社債や株式などに分散投資する投資信託で、1月末現在のポートフォリオの直接利回りは年5.7%になっている。隔月で80円~90円の分配金を支払い、分配金利回りは4.27%になっている。

 また、「北米リート・セレクトB(定額目標分配型/H無)(愛称:ほくと星)」は、米国REITを投資対象とした投資信託で、1月末時点のポートフォリオの利回りは年4.6%。隔月で100円の分配金を支払っており、分配金利回りは5.28%になっている。

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 このように、様々な特徴がある投資信託が「隔月分配型」にはある。基準価額は日々変動し、また、分配金の額も一定しているとは限らないので、分配金利回りは一定しているとは言い難いが、年4%以上の水準で分配金を得られる投資信託はある。ウエルスアドバイザーの公式サイトでは、個々の投資信託について、過去数年間の分配実績、また、分配金利回りの推移などを公表している。安定的な分配金を目的に投資信託を選ぶ場合は、やはり、過去数年にわたって安定的に分配金を出しているかどうかを確認しておきたい。投資先、分配実績、そして、基準価額の推移などを確認した上で、自身の投資目的に適っているかどうかを判断し、納得のいく商品を選びたい。(グラフは、「成長投資枠」の対象で、分配金利回りが高い投資信託の例)

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