新NISA「コラム」

新NISAで買える投信(8)、「グロース」と「バリュー」の使い方と見分け方

 今年1月にスタートした新NISAは、1人当たりの投資収益非課税枠が1800万円、非課税対象期間も無期限ということもあり、これを機に投資をスタートする人も少なくないと考えられる。「新NISAを使って何に投資すれば、最も効果的に運用ができるだろうか」と考え中の方も少なくないと考える。そこで、新NISAで購入できる主な投資信託の種類やその特徴について概観してみたい。ここでは投資信託協会や金融庁が発表している商品リストに基づいて紹介する。実際には、個々の金融機関によって取り扱いの有無が生じることにご留意いただきたい。株式投資の代表的な投資戦略として、企業の成長期待に投資する「グロース(成長株投資)」と、株価の割安度に着目して投資する「バリュー(割安株投資)」の違いがある。それぞれの投資戦略の特徴について確認しておきたい。

 グロース投資とは、市場平均よりも高い成長が期待される企業に投資する手法。企業の成長によってEPS(1株当たり利益)が伸び、そのEPSの拡大を先取りする形で株価が上昇することに期待している。米エヌビディアなどは現在の代表的なグロース株だ。同社のPER(株価収益率)は、決算発表前は345倍などというとてつもなく高い水準だったが、好調な決算が発表されると、EPSの水準が上がったためにPERは50倍台に低下した。好業績を期待して株価は高いPERにまで上昇し、「割高」を指摘されることも少なくないが、好業績によって将来のPERの水準が訂正され、それまでの高いPERを正当化してしまうことを繰り返す動きになることが特徴だ。投資信託では、名前に「成長株」や「グロース」などという言葉がついていて見分けやすい場合がある。

 一方、バリュー投資とは、市場平均よりも各種株価指標が割安な状態にある株式に投資する。その企業が倒産したり、大幅な業績悪化が見込まれないかぎり、割安な株価指標が是正されるように、株価の水準訂正による上昇が期待される。代表的なバリュー株に、日本の大手銀行株などがある。伝統的な業種で成熟していて、業績が安定的に推移すると見込まれる企業だ。簡単には経営破たんしないような規模と信用力があると、株価が下落して株価指標が割安になった時の反発力も大きい。また、安定した業績のあるバリュー株は、配当利回りが高くなっている場合が多い。投資信託でバリュー戦略に該当するものには、名前に「バリュー」と入っているものもあり、また、「高配当(好配当)」を謳った商品も多い。

 新NISAの「成長投資枠」の対象銘柄で、国内大型株を投資対象として「グロース」に分類される投資信託の代表である「情報エレクトロニクスファンド」と、「バリュー」に分類される「ニュー配当利回り株オープン」のパフォーマンスを比較すると、過去1年、5年、10年で「情報エレクトロニクスファンド」が優位にあるものの、過去3年では「ニュー配当利回り株オープン」が優位という結果になっている。長期のパフォーマンスでの「グロース」の優位さが際立っているが、この2年~3年の日本株相場のように「バリュー」が活躍する相場もある。「グロース」と「バリュー」は、その成績が良い時と悪い時に違いがあるため、その性格の違いを活かして、好景気で「グロース株が活躍しやすい」、あるいは、「株式市場に調整が必要な局面なので、バリュー株ファンドで投資リスクを抑制する」など、局面に応じた使い分けをしたい。

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 一般的に「グロース」が活躍しやすい局面は、景気が良く、企業業績が伸ばしやすい環境だ。「バリュー」は、常にチャンスがある投資手法だが、割安な水準で購入した株式について、その割安さに多くの投資家が気づいて水準訂正されるのを待つ必要がある。このため、「グロース」が注目されやすい局面では、動きの鈍さが嫌われることがある。また、それぞれに企業価値を正しく把握する能力、また、企業の成長戦略についてしっかりとした見通しを立てられる能力が問われるため、運用会社の調査力が問われる。投資する場合は、パフォーマンスの内容については、長期の実績を確認するようにしたい。

 ただ、実際には「グロース」か「バリュー」かを見極めるのは難しいケースもある。投資信託の名前に「グロース」や「バリュー」と入っていればわかりやすいのだが、そうではないケースは、ウエルスアドバイザーの公式サイトでは、国内株式を対象とした投資信託の場合は、カテゴリーで「大型グロース」「中型バリュー」など「グロース」と「バリュー」をカテゴライズしている。「カテゴリ―」を手掛かりに、投資信託を選ぶことも1つの方法だ。(グラフは、成長投資枠の代表的な日本株「グロース」と「バリュー」ファンドのパフォーマンス推移)

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