新NISA「ニュース」
新NISAスタート直前対策! インデックスとアクティブはどちらを買うべきか?
新NISAのスタートを2024年1月に控えた今、改めて、「インデックスファンドか、アクティブファンドか」という問題が気になってくる。「投資初心者が最初に投資するのであれば、低コストのインデックスファンドを積立投資で」と言い切ることは難しくないのだが、新NISAは非課税期間が無期限となり、非課税限度額も1人あたり1800万円という枠が使える制度だ。「初心者」は遠からず「経験者」となり、比較的大きな資金を運用するようになる。資金量100万円の場合は、年率1%の違いは1年間で1万円であり、10年続いても10万円程度のことでしかない。しかし、1000万円の資金になると年率1%の違いが1年で10万円、10年では100万円になってくる。見過ごしにはできない違いといえよう。投資を始めて10年が経った時に、「あの時、選び間違えた」と後悔するより、最初からインデックスファンドとアクティブファンドの違いを理解した上で、将来の対策を含めて資産運用プランを考えておきたい。
「投資経験のない人は、まず、インデックスファンドの積立投資を」という案内は、もっともなことだといえる。インデックスファンドとは、「日経平均株価」、「NYダウ」、「S&P500」など、代表的な株価指数(インデックス)に連動する運用成績をめざすファンドなので、テレビのニュースなどで「今日の株価は・・・」と紹介されることもあって、株価の上げ下げ、すなわち、運用成績のプラスマイナスが分かりやすい。また、年間の利息がゼロ%台の預貯金では、インフレ(物価高)によって資産価値が目減りすることも予測され、株式を組み入れた投信への投資によって資産価値を守る効果も期待できる。
投資信託は、銀行や証券会社で買える金融商品だが、預貯金や国債等と違って、個々の投信の運用方針は異なり、運用方針によって運用成果も異なる。銀行や証券会社の窓口で「投信をください」とお願いするだけでは、買えない商品だ。投資信託の名前を具体的に指定して注文するか、どのような運用成績が期待できる商品がほしいのか担当者と相談した上で選ぶ必要がある。
「投信(投資信託)」と一口に言っても金融機関では数十本から数百本の商品を扱っている。ネット証券では、たとえば、SBI証券では2500本を超える品揃えになる。この本数の多さだけでも一口で注文できるものではないことがわかるだろう。この1本1本の投信が、それぞれ異なる名前がついていて、それぞれに異なる値動きをしている。その中で、インデックスファンドは連動をめざすインデックスが同じ場合は、似たような値動きをする。似ているだけで、実際には運用成績は異なる。運用に関する手数料(信託報酬率等)の違い、また、インデックスに連動させるためのテクニックの巧拙などがあるためだ。たとえば、信託報酬率の違いは、「日経平均株価」に連動するインデックスファンドで、年0.11%(税込み)から年0.88%まで8倍の違いがある。同じように「日経平均株価に連動するインデックスファンド」という運用方針であっても、運用に関する手数料が年0.11%と0.88%では、運用期間が10年、20年と長期化すると目に見えて運用成績の差が出てくることになる。
インデックスファンドの場合は、「どのインデックスに連動するファンドか」ということを選ぶことによって基本的な運用成績が決まる。主なインデックスは、国内の株式を投資対象とした「TOPIX(東証株価指数)」、または、「日経平均株価(日経225)」。先進国の株式を投資対象にした「MSCIコクサイ」、または、先進国の中でも米国だけに投資対象を絞った「S&P500」。そして、新興国の株式を投資対象にした「MSCIエマージング・マーケッツ」。さらには、新興国を含む全世界の株式を投資対象にした「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」。これらが代表的なインデックスになる。これら代表的な株式のインデックスに連動するインデックスファンドは、1つのインデックスについて複数社からインデックスファンドが提供されている。運用に係る手数料の違いによって運用成果が違ってくるため、できるだけ実質的な運用報酬が低いファンドを選びたい。
一方、アクティブファンドは、インデックスファンドと比べると千差万別だ。特定のインデックスを目標として、そのインデックスにプラスαの運用成績をめざすファンドもあれば、インデックスなど意識しないで絶対的な収益をめざすファンドもある。たとえば、同じように日本の株式を対象として「成長株」に投資するとしていても、個々の運用会社によって調査担当者の見立ては異なるので、ある成長株ファンドでは投資対象に入っている企業でも別の成長株ファンドでは投資対象ではないというようなことが良くある。個別に企業調査して投資対象の可否を判断すると、そこには必ず予測が入り、その予測は様々な観点によってなされるためだ。そして、その業績予想をしている企業の数、また、予想値の確かさなどは、運用会社によって異なる。この調査・分析力の違いが、運用成績を左右する1つの要素だ。
さらに、運用を担当するポートフォリオマネージャー(ファンドマネージャー)の力量によっても運用成績は左右される。次の市場の流れを読み解く能力や危機回避能力、あるいは、新しい成長企業を発掘する能力など、運用担当者の能力によって際立った運用成績をたたき出している投信がある。大手運用会社などでは、同じような調査情報を使っていながら、運用担当者によって運用成績が異なるということがある。そして、運用担当者の運用力を見極めることは、非常に難しい。特に、若い運用者の場合は、運用成績の良さは数値で確かめられるにしても、それがまぐれで良いのか、継続的に良いのかを見極めるのが難しい。長年の運用実績があるベテランの運用者であれば、ある程度の判断はできるが、その時点から20年、30年先まで現役でい続けられるかどうかはわからないというネックがある。
アクティブファンドのコスト控除後のパフォーマンスがインデックスファンドを上回る運用成績であれば、アクティブファンドに投資したいと考えるのが普通だ。年率1%、2%の違いでも、5年、10年と期間が長くなるほどに大きな差になっていく。しかし、インデックスに対して継続的にパフォーマンスで勝ち続けるアクティブファンドを見つけ出すことは難しい。現時点でインデックスに勝っていても、5年先、10年先まで勝ち続けられるかということは簡単には判断できないからだ。だからこそ、「分からないことは考えないで、インデックスファンドを買えばよい」ということが一般的には言われている。それでも、アクティブファンドの魅力を捨てがたい人は、インデックスファンドを購入すると同時に、アクティブファンドも購入するという手段がある。新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能で、併用することによって毎月30万円、年間で360万円の非課税投資枠が使える。このファンドならインデックスに勝てそうだと考えるアクティブファンドをインデックスファンドと一緒に持つことによって、インデックスプラスαのリターンをめざしてみたい。
インデックスファンドかアクティブファンドかという商品選びに確かな答えはない。実際に、現在運用されている公募投信(ETF除く)の残高上位ファンドをみると、第1位はインデックスファンドの「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」だが、第2位は「アライアンスバーンスタイン・米国成長株投信Dコース(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」になり、6位は「グローバルESGハイクオリティ成長株式(為替ヘッジなし)」、第7位は「インベスコ 世界厳選株式<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」、第8位は「ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)」など、いくつものアクティブファンドが入っている。時代はインデックスファンドに追い風といわれるが、実は、アクティブファンドに対する期待も強いことを忘れずにいたい。(グラフは、純資産残高上位ファンドの過去3年のパフォーマンス)
最新記事
- 【コラム】新NISAつみたて投資枠対象投信研究(3)、バランス型残高トップは株式と債券を半々、パフォーマンスは?(2024/6/05 17:45)
- 【コラム】新NISAつみたて投資枠対象投信研究(2)、海外資産残高トップは「eMAXIS Slim」、パフォーマンスは?(2024/5/31 17:50)
- 【コラム】新NISAつみたて投資枠対象投信研究(1)、国内資産残高トップは「ひふみプラス」、パフォーマンスは?(2024/5/30 19:10)
- 【ニュース】労働人口が伸びる新興国に投資するピクテ「iTrust新興国株式」、新NISA成長投資枠で優秀ファンド賞受賞(2024/4/02 18:35)
- 【ニュース】株式と金をしっかり組み合わせたピクテの「ポラリス」、新NISA成長投資枠で優秀ファンド賞受賞(2024/4/02 18:20)
- 【コラム】新NISAで買える投信(9)、最大下落率が10%程度で安定した収益が期待できる債券投信(2024/3/25 17:30)