新NISA「ニュース」

新NISAで検討したい超長期の成長資産とは? 人口ボーナスで成長が期待されるグローバルサウス

fund_02150.jpg 2024年1月からスタートする新しいNISA(新NISA)は、国民に証券投資による長期の資産形成を促す目的で提供される税制優遇口座だ。投資信託や上場株式に投資して売買益や配当・分配収益を得た場合、通常は収益に対して約20%の税金がかかるが、NISA(少額投資非課税制度)では課税されない。しかも、新NISAになると年間360万、1人当たりで生涯1800万円の非課税枠が使えることになる。特に、これから資産を作っていこうと考えている20代、30代という若い世代は、長期に成長する資産を投資対象に選んで、長期投資によって投資元本を何倍にでも増やすような運用プランを考えているだろう。長期の資産形成手段として活用を考えたい資産クラスに新興国株式がある。

 小さな資金でも長期間にわたって継続的に投資することによって大きな資産をつくることが可能になる。たとえば、毎月2万円を30年間にわたって積立投資を実施した場合、投資元本は720万円だが、年平均5%で資産が成長していけば、30年後の資産評価額は約1638万円になる計算だ(非課税口座での計算)。この成長率が年7%にアップすれば、約2353万円に増える。年率1%でも高い成長が期待できる資産を選ぶと、長期で考えた場合、その成果が大きく異なることは注目される。

 現在、投資信託を使った積立投資の市場では、米国の「S&P500」、あるいは、全世界株価指数である「MSCI ACWI(オール・カントリー)」に連動するインデックスファンドを使った積立投資が主流になっている。これは、過去3年(年率)のトータルリターンが「S&P500」連動型で年23.7%、「オール・カントリー」でも年20.2%と非常に高いリターンを残してきたことが背景にある。これが国内株の「TOPIX(東証株価指数)」連動型だと年15%程度に落ちてしまうため、どうしても関心は米国株式に向かってしまっている。

 ところが、過去5年(年率)のトータルリターンは「S&P500」で15.8%に落ちる。過去3年のパフォーマンスは異常に高いのだ。「S&P500」に20年投資した場合の平均リターンは年率11.2%程度、30年では11.0%程度というリターンになる。これを「TOPIX」で調べてみると、20年で年6.3%、30年で年2.8%という水準に落ちてしまうため、これまでの30年間の成績を振り返る限り、米国「S&P500」への投資は、非常に良い成績を残してきたということになる。

 ただ、今後も、これまでと同様に高いリターンを「S&P500」があげていくことができるかはわからない。現時点でも、過去30年で見てみると年率11%程度になるため、過去3年の23%超という成績は、過去30年間で非常に高い成績だったということを踏まえた判断が必要だ。反対に、「失われた30年」という言葉があるくらいに低迷を続けてきた日本株は、過去30年の平均リターンがわずかに2.8%という低成長だが、デフレからインフレに転換してきたという日本経済の環境の大きな変化を考えれば、日本株のパフォーマンスは、むしろこれからに期待できるといえるのかもしれない。

 一方、これから将来を考えると、いわゆる成熟経済に入っている米国や日本など先進国と比べると、新興国やグローバルサウスとよばれる開発途上国に大きな成長が期待される。特に注目されるのは、開発途上国の中で人口が増大し、生産年齢人口(15~64歳)が従属人口(14歳以下と65歳以上)の2倍以上存在する「人口ボーナス」の時代を迎えている国々だ。たとえば、昨今の経済成長率が注目されているインドは、2011年から人口ボーナス期に入ったとされ2040年頃まで人口ボーナスの期間が続くといわれている。南米の国々、そして、南アフリカをはじめアフリカ諸国も人口ボーナス期を迎えているといわれている。アジアは、パキスタンやバングラディシュ、フィリピンのように人口ボーナス期の国がある半面で日本をはじめシンガポールやタイなどは生産年齢人口が減少する「人口オーナス期」になっている国もある。中国も人口ボーナス期を終えた国の1つに数えられる。

 働いて稼げる人口が増えている人口ボーナス期には、一般的に所得水準の向上に合わせて消費市場も拡大し、国が豊かになっていく。この内需拡大が国内に成長産業、成長企業を生み出し、その国の株式市場も大いに発展する。日本は1950年~1990年が人口ボーナス期だっだとされるが、この間、日経平均株価は101円(1950年年初)から3万8921円(1990年年初)へと385倍になった。非常に大きな変化を遂げたことになる。現在、人口ボーナス期を迎え、それが長く続くと予測される国の中には、日本の株式市場が経験したような大変化を遂げる国が出てくる可能性もある。近年、インドへの注目度が高まっているのは、そのような長期にわたる経済発展の可能性があるためだ。

 そこで、長期の資産形成の手段として開発途上国の株式に投資するファンドを検討したい。たとえば、「ハーベストアジアフロンティア株式ファンド」は、アジアのフロンティア諸国の発展の機会に投資するファンドだ。組み入れ企業が事業展開している国は、ベトナム69.8%、スリランカ8.2%、バングラデシュ5.7%、カザフスタン4.5%などとなっている。また、「HSBC ニューフロンティア株式オープン」は、主に中東からアフリカ、アジア、中南米など幅広い地域の株式に分散投資する戦略で、現在の国・地域別の組み入れ比率は、アラブ首長国連邦17.1%、カザフスタン13.6%、ベトナム11.3%、サウジアラビア11.3%、カタール6.8%などという比率になっている。「グローイング・フロンティア株式ファンド」は国・地域別組み入れ比率が、ベトナム36%、カザフスタン10.8%、イギリス9.0%、モロッコ8.2%、ルーマニア7.9%などとなっている。このファンドは欧州の国にも投資していることが特徴だ。

 そして、この10月に新規設定された「EXE-iグローバルサウス株式ファンド」は、国・地域別投資比率がインド16.3%、ブラジル9.3%、メキシコ6.8%、インドネシア6.4%、サウジアラビア5.3%など、南米も含めたグローバルサウスといわれる南半球の国々に投資している。

 各国の株式市場の成長率は様々だ。たとえば、現地通貨ベースでみていくと、ベトナムの主要株価指数は過去3年の騰落率が33.5%だった。カザフスタンは79.9%、モロッコ31.6%、バングラデシュ26.9%などとなっている。米国の33.6%を上回る成績を残している国も少なくない。中には、ケニアのマイナス18.5%など2ケタマイナスになっている国もあり、市場規模が先進国などとは比較すると小さいため、価格変動率は大きくなりがちだ。市場を分散すること、また、投資先とする国の選別も重要になる。

 これから成長が期待できる国々には、個別の国に単独で投資するファンドも存在する。たとえば、インド、ブラジル、ベトナム、インドネシア、メキシコ、トルコ、フィリピン、タイ、マレーシア、ロシア、中国などだ。各国の成長率や政治・経済情勢、人口動態などを調べて、複数国に投資するファンドに加えて個別国に投資するファンドを組み合わせて投資するという方法もある。あるいは、先進国のファンドと合わせて分散投資を実施することも可能だ。個々の国に単独で投資すると、ここ数年の中国株ファンドのパフォーマンスが悪いように、経済成長が思うように進まないリスクもある。これら、ファンドの中には、現時点では新NISAの成長投資枠対象ファンドにリストアップされていないファンドもある。残高が小さいファンドは、新NISAの対象にならない可能性もある。まずは、新NISAの対象であるかを確認の上で、投資先を地球儀のレベルに広げて、自身の納得のいく投資ポートフォリオを考えてみたい。(グラフは、フロンティア株式を投資対象としたファンドのパフォーマンス推移)

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