新NISA「ニュース」
新NISAでは「ETF」の活用も一考、コスト優位で市場価格で売買も可能
2024年1月に始まる新しいNISAは、資産運用立国をめざす政策の重要なツールとして期待される。個人金融資産の50%強をゼロ%台利息の預貯金で貯蔵している国民が、投資信託等を通じて株式市場等に資金を投資し、市場の成長や分配金による資産成長を実現できれば、より豊かな人生設計ができるようになる。また、「老後の資産が足りない」とばかりに、本来は消費すべき資金をも貯蓄に回して縮こまってしまっている国民のマインドを転換し、個人消費を刺激して国内産業の底上げにつなげる効果も期待される。年間の非課税限度額が360万円、そして、生涯の非課税限度額が1800万円という大きな非課税枠を提供しようとする新NISAが有効に活用されることが、資産運用立国の成功には不可欠な第一歩になる。新NISAは、主として投資信託の活用を促しているが、「成長投資枠」では株式や上場投資信託(ETF)の活用も可能だ。それぞれの投資資産の特徴を活かして、新NISAを有効に活用したい。
新NISAは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」(投資限度額は1200万円)の2つの投資枠が併用できるが、「つみたて投資枠」は投資限度額こそ上限1800万円(新NISAの投資限度額を全て使い切ることが可能)と大きいが、積立投資を実施する必要がある他、投資対象も「つみたてNISA」の対象銘柄に限られるなど制限の大きな投資枠になっている。これと比較すると「成長投資枠」では、投資対象は投資信託だけではなく、ETF(上場投資信託)やREIT(上場不動産投資信託)を含む上場株式に広がる。投資可能な投資信託も「つみたて投資枠」では250本程度の対象商品しかないが、「成長投資枠」では1700本近い商品が対象にリストアップされている。数が多ければ良いというものではなく、数が多ければ選ぶことが難しくなるという指摘もあるが、より多くの選択肢があることは、投資の幅を広げるという点では大いにプラスに評価できるポイントといえる。
たとえば、上場株式の中には配当利回りが年5%台の銘柄が少なくない。NISAの枠外では、配当に対して約20%の税金がかかるため、5%の利回りは実質4%に利回りになっていたが、NISAの枠組みを使うと5%の利回りがそのまま受け取れることになる。極端な話になるが、「成長投資枠」の1200万円の投資可能資金(1年間の投資可能金額は240万円)で利回り5%の配当利回りがある株式を購入すれば、年間60万円の配当金を得られる計算だ。毎年240万円の投資を5年間続けて1200万円とし、1200万円が配当利回り5%で非課税枠にあれば20年間で配当金の累計1200万円が計算できる。投資元本が2倍になる計算だ。もちろん、配当利回りが高い企業の中には、経営状態が悪いため株価が大きく下落した結果として配当利回りが高くなった企業もあり、そのような企業は経営破たんのリスクがある。また、減配によって5%超の配当利回りを維持できない企業もあるだろう。したがって、安定的に配当利回り5%を維持できる株式を選ぶことは簡単ではないが、銘柄選定がしっかりできれば、非常に魅力的な投資になる。
国内株式の配当利回りに着目した投資信託では「日経平均高配当利回り株ファンド」が9月末時点で運用ポートフォリオの予想配当利回りが4.0%になっている。同時点での日経平均の予想配当利回りが1.9%であるため、より高い配当利回りの銘柄をピックアップした結果が年4%ということだ。日経平均採用銘柄から配当利回りの高い30銘柄をピックアップしている。これに対し、個別の高配当の株式を自分で判断して選ぶ、すなわち、自己判断というリスクを取ることによって年5%台も可能になる。一つの投資手法として検討できるのではないだろうか。
また、ETFで「NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信」があるが、このETFの9月末時点の予想配当利回りは3.9%だ。このETFは「配当利回りの高い50銘柄から構成される配当利回りウェート方式の株価指数『日経平均高配当株50指数』との連動を目指す」という方針で運用するインデックスファンドであるため、運用会社が意図的に高い配当利回りを狙って投資しているファンドではない。ただ、株価指数として「高配当」を意識した銘柄群で構成した指数だ。ETFであるため、信託報酬率は年0.308%(税込み)と低い。「日経平均高配当利回り株ファンド」が年0.693%であるから、コストの面で評価できる。
今では、SBI証券のような大手ネット証券では、株式やETFの売買に関係する手数料を無料にしている。そうなると、ETFの運用に関わる手数料は信託報酬のみだ。その信託報酬が一般の公募投信よりも低く、かつ、ETFは上場していることによって値段を決めて売買することも可能になっている。時価が見えない公募投信に対し、市場で取引されるETFは一分一秒で刻々と変化する価値の変化を見ることができるというメリットもある。
もちろん、公募投信には毎月1万円投資するなど金額を一定にした投資に対応しやすい、ETFとは比較にならないアクティブファンドの品ぞろえなど幅広い商品ラインナップがあるなど、公募投信ならではの強みもある。
さらに、上場株式やETF、REITを投資対象に加えたいと考えると、証券会社にNISA口座を開設する必要があり、かつ、売買手数料が無料にするためには一部の大手ネット証券を選ぶ必要があるなど、NISA口座を開設する金融機関を選ばなければならない。このように新NISAの全ての利用者が恩恵を受けるわけではないが、「成長投資枠」で上場株式やETFに投資することができる投資家は、それぞれの投資資産の特徴を活かして、より柔軟な投資プランを考えることが可能になる。投資を長く継続し、かつ、低コストでより良い成果を目指すうえでは、上場株式やETF等の活用も検討しておきたい。(イメージ写真提供:123RF)
(お詫びと訂正)NISA口座では保有株式等の「貸株」はできません。当該部分を削除し、お詫びして訂正します。
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