新NISA「ニュース」
新NISAのスタートで投信市場に予想外の資金流入の可能性、フィデリティの1万人調査が明らかにした現状
フィデリティ投信は10月12日、「フィデリティ・ビジネスパーソン1万人アンケート 2023年」を発表した。同調査は2010年より実施し、資産形成や退職準備に関する定点観測を続けている。10回目となる今回は、新NISAのスタートが間近に迫る中で、現行・新NISA制度の認知度や活用実態、お金に関する情報源の変化などに焦点を当てた調査になった。この調査結果についてフィデリティ・インスティテュートの首席研究員の浦田春河氏(写真)は発表当日にメディア向けに解説し、「新NISAの認知度は高く、非課税枠の拡大につれて投資金額を増やす機運が高まっている。インフレと賃上げも投資の促進要素として作用し、SNS等からの情報供給の加速とも相まって、資産運用をしようという雰囲気が醸成されている」とし、「新NISAによる投資枠拡大を心待ちにしている人が多く、新NISAスタートを機に、意外に大きな資金が投信市場に流入してくる可能性がある」と語った。
同調査の特徴は、サンプル数が1万を超える大規模な調査である点だ。今回は2023年6月30日~7月7日に実施し、会社員及び公務員の総数2万1036人から回答を得た。男性65.8%、女性34.2%の比率で、20代が16.7%、30代が22.4%、40代が28.7%、50代が24.9%、60代が7.4%と働く世代を広く調査している。
現行NISAや新NISAに着目した調査結果では、現状でNISAを利用しているのは、一般NISAが回答者の10%超、つみたてNISAが20%超という中で、新NISAの認知度は54%と高い水準にある。「7月の調査で50%を超えているので、10月には一段と認知度は高まっていると考えられる」(浦田氏)と、新NISAへの関心の高さがうかがえる結果になった。さらに、新NISAでの投資予定額を聞くと、「決めていない」という回答が全体の3分の1程度存在するものの、「年間の上限額360万円」という回答が5%存在した。特に、一般NISAを使って限度額の年間120万円の投資を行っている人の47%が年間360万円の枠を使い切ると回答している。また、つみたてNISAで上限の40万円を投資している人も20%が360万円の枠を使い切るという回答だった。
この結果について、浦田氏は、「基本的に、現在の一般NISAやつみたてNISAで投資している金額を、そのまま新NISAでも継続して投資するという回答が多いものの、一般NISAで120万円の上限枠を使い切っている人の47%の人が新NISAでは資金量が3倍にあたる360万円の投資を考えているという回答は驚き」と受け止めていた。つみたてNISAについては、年間40万円が9倍に拡大するにもかかわらず、その20%が限度枠いっぱいでの投資を考えている。この結果は、現行のNISAの限度額に不満を抱えていた投資家が多かったことを示すとともに、新NISAによる非課税限度額の拡大によって、かなり上乗せ投資が期待できることを示してもいる。
一方、投資情報の入手経路を聞くと、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などという伝統的な媒体に対して、SNSやブログ、そして、ニュース系Webサイトの利用が拡大している。特に、Z世代といわれる20歳~26歳や27歳~36歳の若者は、SNSやブログからお金に関する情報を得ているという実態がわかる。ただ、53歳~64歳の高齢層は、SNSやブログの利用が少なく、また、貯蓄水準が2000万円を超えると、金融機関から情報を得ているという回答が大きく伸びる。そして、情報収集に利用しているSNSを聞いたところ、「X(Twitter)」と「Youtube」の利用が多く、傾向として若年層は「X」の利用率が高く、高齢層は「Youtube」を好む傾向があった。
また、投資行動を聞いた設問では、「投資を開始した」という人が、その理由としてあげているのが「世の中が投資をする雰囲気になってきたから/友人・知人が始めたから」という回答が目立って多くなっていた。同調圧力が強いといわれる日本社会で、「世の中が投資をする雰囲気になってきた」と感じられるようになっているのは、「貯蓄から投資へ」という大きな運動が、ようやく浸透してきたといえるのかもしれない。もしくは、大幅に非課税限度額を拡充し、かつ、投資期間も無制限とした新NISAの誕生が、国民の間に投資熱を広めるきっかけになっているのかもしれない。このような、国民の間に広がりつつある投資への意欲が新NISAのスタートを盛り上げると考えられる。2カ月余り先に迫った新NISAのスタートが待ち望まれる。
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