新NISA「ニュース」
新NISAで投資はじめ(4)、配当と値上がり益で1粒で2度おいしい「高配当株」
生涯非課税枠が1人あたり1800万円になる「新NISA」がスタートした2024年に目立つのは「高配当株」に着目したファンドの躍進だ。1月24日には新たに「成長投資枠」の対象銘柄として「Tracers 日経平均高配当株50インデックス(奇数月分配型)」と「インデックスファンド日経平均高配当株50(奇数月分配型)」が追加された。いずれも日本株の中で配当利回りが高い株式を投資対象に組み入れるファンドだが、米国株式を対象とした「高配当株ファンド」も根強い人気があり、現在の投信人気の潮流の1つになっている。なぜ、「高配当株」は人々を惹きつけるのだろうか?
今年1月19日までの資金流出入状況をみると、株式インデックスファンドで「全世界株式(オール・カントリー)」「米国株式(S&P500)」「米国株式(NASDAQ100)」「インド株インデックス」などが選好されているが、これに次いで目立つのが「半導体株」と「高配当株」にフォーカスしたファンドだ。「高配当株」に着目した投資信託については、資金流入額ランキングで第9位に「SBI 日本高配当株式(分配)ファンド(年4回決算型)」、第10位に「日本好配当リバランスオープン」、第21位に「日本好配当株投信」、第28位に「米国株式配当貴族(年4回決算型)」、第38位に「日経平均高配当利回り株ファンド」が入るなど、全4414銘柄の中で、上位にランクされる銘柄が目立った。これらはいずれも「成長投資枠」の対象に入っている。
「高配当株」とは、株式の「配当」が高い株式(銘柄)をいう。配当は、銘柄ごとに異なり、1年間の決算の内容に応じて売上から経費を差し引いた後の余剰金を株主に分配している。原則として年1回支払われるが、多くの企業で年2回の配当(半年ごと)を支払っている。配当金は、企業から「1株当たり30円」などと発表がされている。配当利回りは、株価の時価で1株当たりの配当金を割って求める。株価が1000円の株式が年間30円の配当を実施しているのであれば、配当利回りは30÷1000で求められ、年3%ということになる。配当は一度決まってしまうと動かないため、株価が下落すれば配当利回りは高くなる。2023年12月現在で東京証券取引所のプライム市場の上場銘柄の配当利回りは単純平均で2.16%、加重平均利回りで2.17%という水準だ。この平均水準から一定程度高い配当利回りのある銘柄を高配当銘柄といっている。
配当利回りが高いことは、必ずしも良いこととばかりではない。株価が下落したことによって配当利回りが上がっている場合には、その企業に業績悪化につながるような悪材料がある場合がある。また、株主に配当を支払うよりは、その資金を設備投資や研究・開発投資、企業買収などの資金にあてて、企業成長を優先するという考え方の会社もある。その場合は、配当金額は少ないものの株価は成長を評価して値上がりし、株価が値上がりすることによって配当利回りは一段と低くなるということになる。また、一般的に配当が高い企業は、電力・ガス、金融など比較的成熟し、安定的な事業を展開している企業が多い。事業が安定している企業の株価は、一般的には大きく値上がりするような期待は小さい。「高配当」に着目した投資は、株価上昇で大きな収益を狙うという投資とは異なる運用成績になると考えておいた方が良いだろう。
ただし、たとえば、「コロナ・ショック」のような市場全体がリスクオフで株価が全体的に下げているような時には、「高配当株」の下落率が小さくなる傾向がある。そもそも株価が大きく値上がりしていないということもあり下落するにも限定的という見方もできるが、もう一つの理由として、株価の下落は配当利回りの向上につながるため、年6%や7%などと高い配当利回りになると、その利回りの高さが投資資金を呼び込んで株価が下がりにくくなることもある。また、配当は毎年コツコツと収益として積み上がっていくため、投資期間が長期になるほど、積み上がった配当収益が大きくなり、配当収益を加味したトータルリターンがマイナスになりにくくなるという効果もある。
また、投資信託として「高配当株」に着目したファンドを使うと、特にアクティブファンドの場合は、運用会社の専門家が銘柄を良く吟味して選別投資してもらえるという安心感がある。「高配当株」の場合は、株価が大きく下落したことによって配当利回りが上がったという場合もある。また、企業の経営状態が悪くなって現在の配当金額を維持できなくなる懸念が高まっている場合もある。そのような企業の変調に対してプロの判断で投資の可否を判断してくれる。そうすることによって、「高配当株」への投資で期待できる「配当」プラス「値上がり益」の2つの収益を同時に狙っていくことが可能になるといえるだろう。
このように、株式としての値上がり期待を持ちながら、配当によって安定的な収益の獲得が期待できるという2つのメリットを併せ持った投資が「高配当株」に着目した投資といえる。新NISAで投資する場合など、長期の投資を考えれば、非常に魅力的な投資対象の1つといえるだろう。(グラフは人気のある「高配当株」ファンドの過去3年間のパフォーマンス推移)
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